久米晃・前事務局長Photo by Masato Kato

次期首相を決める自民党総裁選は、河野太郎行革担当相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行の4人が立候補し、終盤を迎えた。菅義偉首相の突然の「出馬とりやめ」もあって、派閥の大半が事実上の自主投票を決め、「安倍・菅政権」やアベノミクスの継承をめぐっても、候補者や世代、地方の党員などの間で議論が分かれている。衆院選が迫り、国民受けする「選挙の顔」選びが優先されるなかで、果たしてどういう結末となるのか。乱戦模様になった総裁選の“内情”と総選挙の展望を党の選挙対策などを長年取り仕切ってきた、久米晃・前自民党事務局長に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部特任編集委員 西井泰之)

「菅さんでは衆院選は戦えない」
総選挙“惨敗”の危機感が作った総裁選

――総裁選は、女性候補2人を含め4人が出馬するなど乱戦模様です。一見、自民党が活気づいているようにも見えますが。

 総裁選の動向をメディアがなんでもかんでも報道して、自民党がメディアジャックをしたようになっていますからそう映りますが、はたしてどうでしょうか。

 総裁を選ぶというよりも、次の衆院選挙の「顔」は誰がいいかという選挙になってしまっています。

 菅政権は一生懸命、新型コロナウイルス対策に取り組んではきましたが、国民の不満や怒りは強い。自民党の多くの議員も『菅さんでは衆院選は戦えない。菅再選だったら(選挙で)悲惨な目に遭うぞ』となっていました。その焦り、危機感が今回の総裁選を作ったわけです。

 ただ、候補者の戦略というか、訴えるところはそれぞれ違っていて、論点がかみあっていない感じです。岸田氏はコロナ後の「政策」の話、高市氏は対中国外交などでの「思想」的なこと、そして河野氏と野田氏は、古い行政手法や党の体質からの脱皮といった「情緒」的なことを訴えています。だから政策論争が必ずしも深まっている感じはしません。