初めのうちは、残業が続き、身体が疲れているせいだろうと思ったりした。でも、週末にゆっくり休んで身体の疲労は取れたはずなのに、同僚から食事や飲みに誘われても、なぜか気乗りしない。そうかといって、断るのも気まずいため、無理して付き合うと、気持ちが疲れていてどうにも会話を楽しめない。

 もしかしたらこれは心が悲鳴を上げているのかもしれない。そう思って、これまでの自分を振り返ってみると、確かに無理をして人付き合いを良くしていたような気もしてくる。そこで、根っから人付き合いを楽しんでいたわけではなかったのではないかと思い、考え込んでしまったという。

いつの間にか承認欲求のとりこに……

 話しているうちに、その男性は、ある気付きを得たようだ。承認欲求のとりこになって自己アピールばかりする同僚を見て、「なんだ、あの自己アピールは。ほんとに見苦しいな。ああはなりたくないものだ」と思っていたが、もしかしたら自分も承認欲求に振り回されているのかもしれないと言いだした。

 なぜそう思うのか聞いてみると、

「私は、自己アピールするようなタイプじゃないんですけど、別の形で承認欲求に振り回されてるような気がするんです。付き合いの良さが私の取り柄だと思っていましたが、それは相手の期待に応えようとしているだけ、つまり相手から認めてほしいという思いで、無理して付き合いを良くしてたんじゃないかって」

 と胸の内を明かしてくれた。