他人の期待を生きるだけでは、ストレスがたまるばかり

 このように承認欲求に支配されている限り、絶えず人の顔色をうかがい、気まずくならないように気を使うだけでなく、相手をがっかりさせないために嫌なのに嫌と言えなかったり、相手を喜ばすようなことを心ならずも口走ってしまったりすることもある。

 どこかに行くにしても、自分の意思は棚上げして、相手がどこに行きたいかで決める。みんなで何かするにも、自分が何をしたいかでなく、みんなは何をしたいのかを気にする。そのくらいなら良いが、こうした姿勢が習慣化することで、ほんとうは嫌なことも嫌と言えずに引き受けて、後で後悔し、嫌と言えない自分が嫌になる。

 相手がもっと一緒にいたいのが分かると、どんなに仕事が忙しく切羽詰まっていても、食事に付き合うだけでなく、その後の飲み会まで付き合ってしまう。家族との約束があるのに、同僚から誘われると反射的に「いいね」と答えてしまう。

 相手を尊重し、その期待を裏切らないようにするというのは、決して悪いことではないし、思いやりのある態度といえる。そのおかげで、相手にとって一緒にいて心地よい人物ということになっているはずだ。

 しかし、それが行き過ぎると、相手にとって都合の良い自分を無理して演じ続けることになり、そのストレスでイライラしたり、自己嫌悪に陥ったりして、大きなストレスをため込むことになる。