何でも安請け合いしてしまう自分にうんざりしているという30代の女性も、似たような思いを口にする。

「休みの日に出かける予定を立てていても、同僚から出勤日を替わってもらえないかって言われると、即座に『いいよ』と言ってしまいます。それで後になって、『なぜ断らなかったんだろう。予定があるって言えばそれで済んだのに……』と自己嫌悪。気まずくなるのが嫌で、すぐにいい顔をしてしまう。結局、嫌われたくない、良い人に見られたいっていう思いにとらわれてるんですよね。まさに承認欲求に振り回されて、自分の思いに忠実に動けていないんです」

 この2人の話を聞いて、他人事と思えない人も少なくないはずだ。

過半数は「良い人を演じてしまうことがある」

 職場の同僚のように、よく知っている身近な相手に対しても、嫌と言えずに無理をしている人は、意外に多いのではないか。

 私が310人の大学生を対象に実施した意識調査でも、「人から嫌われたくないという思いが強い」という人が79%もいる。また、「人から嫌われているのではと不安になることがある」という人が60%、「相手からどう思われているかが気になって、言いたいことを言えないことがよくある」という人も52%となっている。その結果、「良い人を演じてしまうことがある」と答えた人は60%。過半数が「承認欲求のせいで、無理して良い人を演じている」ということになる。

 学生時代でも、友達に対してさえ、このように無理して良い人を演じてしまう人が過半数もいるのだから、就職してから職場の人たちに嫌と言えず、無理をして良い人を演じてしまう人が多いのは当然といえるだろう。