自分と他者の感情を知るために
「ムードメーター」を使う

 気になるのは、自分や他者の感情を知る方法だ。池照氏がオススメするのは「ムードメーター」の活用。ムードメーターとは、アメリカ・イェール大学の感情知性センターという研究機関が開発した、今の感情状態を測るもの。日本語版をアイズプラスで作成したという。

「ムードメーターは、横軸がフィーリング(主観的な感情のレベル)、縦軸がエネルギー(身体の活力や体力レベル)になっており、今の状態を10点満点でそれぞれ自己採点します。主観で構いません。二つの点数が交わったマス目を見ると、今の感情が書かれています。たとえばフィーリング8点、エネルギー8点なら『興奮した』、フィーリング8点、エネルギー2点なら『平然とした』になります」

 このツールで大切なのは、当てはまったマス目の感情が何かより、日や時間によって感情が刻々と変化していくのを実感することだという。その移り変わりをマネジメントに生かしていく。

「書いてある感情はあくまで目安であり、自分の状態を把握し言語化することにより表現できることが大切です。ミーティングや定例会議の最初に参加者全員でムードメーターを行うのがオススメです。会議の空気を柔らかくする“チェックイン”の作業としても有効ですね」

 感情を知ったら、それに適した行動を選ぶ。仮に相手のことを「嫌い」だと分かったら、その感情を否定せず認めた上で、嫌いな上司でも仕事上の必要な関係を築ける方法を考える。

「私が実際に行っていたのは、あえて嫌いな上司と一度は食事に行き、少しでも相手との共通点や良いところを見つける作業でした」と池照氏。

「EQや感情マネジメントは、自分の素の感情を変えることではありません。相手のことを嫌いなら嫌いのままでよく、無理に好きになろうというものではないのです。あくまで自分の素の感情を知った上で、成果に結びつけるために感情をうまく活用するイメージです」

 他者の感情に対してどんな行動を取ればよいかは一概に言えるものではないが、感情に着目しながら行動を積み重ねることで、経験値のようにEQが発揮されていくという。