木原氏は私の議員時代の先輩でもありますが、兄貴肌で後輩思いのアツい方です。議員ではなくなった私をご自身の誕生会に呼んでくださったときにはグッときました。

 話がそれましたが、岸田氏は、こうした優秀な若手たちに政策を練らせて、前回の総裁選からずっと地道に準備をしてきました。だからこそ、今回の岸田氏にはどこか新しい風が感じられたのです。

 個人的に特にすごいと思ったのは「中間層の底上げ」を明言した経済政策です。

 たとえば、賃金が公的に決まるにもかかわらず仕事内容に比べて報酬が十分ではない看護師、介護士、保育士などの賃金を引き上げるために「公的価格評価検討委員会(仮称)」を設置して公的価格を見直すなど、経済政策の中身も非常に具体的でした。

 これは「Japan as No.1」と言われた1980年代頃の日本を思い出させます。当時の日本経済の強みはどこにあったのかというと、分厚い中間層です。

 岸田陣営はどこを強くすれば日本が再びよみがえるのかということを分析し、きちんと絵を描けていると、個人的に感じられました。

河野対策より
高市対策が奏功

 そして三つ目として挙げられるのは総裁選挙のシナリオです。選挙戦を戦っている中で、岸田陣営はまず、決選投票に持ち込めるかということを入念に調べていました。

 そして、野田聖子氏が出馬することが決まった瞬間から決選投票のシナリオは濃厚だと想定されていたことは間違いなく、熾烈(しれつ)な2位争いが繰り広げられてきました。

 高市早苗氏との戦いが実際の岸田総裁誕生へ向けてのカギとなることを早期から考えていたからこそ、岸田陣営は後半に向けて河野対策よりも高市対策に力を入れていました。