キリンビールが、ビール類のシェアで11年ぶりにアサヒビールを抜き、トップに立った。熾烈なシェア争いにビール業界はまい進するものの、コロナ禍で業界は疲弊の一途だ。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
キリンが11年ぶりにビール類シェア1位を奪還
アサヒのシェア“隠ぺい工作”も実らず
「2位じゃダメなんでしょうか?」――。民主党政権の目玉政策「事業仕分け」で、蓮舫議員がこう言い放った2009年。その年を最後に、キリンは宿敵・アサヒにビール類のシェアで首位を奪われ続けていた。「2位ではダメ」。心の奥底で思い続けた11年間。ついにキリンが首位奪還を果たした。
ビール大手のキリンビールが、20年1~6月のビール類(ビール、発泡酒、新ジャンル)シェアでアサヒビールを抜き去り、11年ぶりにトップに立った。
アサヒは20年分からビール類の販売数量の公表を取りやめ、金額ベースでの開示に変更していた。この理由について、アサヒの担当者は「経営指標を販売数量から金額に切り替えるため」と説明するものの、言葉通りに捉える業界関係者は少ない。
というのも、19年のビール類市場のシェアはキリンが35.2%とアサヒに迫り、その差はわずか1.7ポイントまで縮まっていた。そのため、アサヒは販売数量を非開示にすることで、今後キリンに逆転されかねないシェアの“隠ぺい工作”をしたと同業他社から捉えられているからだ。
こうしたアサヒの身勝手な行動には、「マーケット全体のトレンドが見えにくくなる」(キリンビール・布施孝之社長)、「業界を挙げて頑張っていこうとしているのに、市場全体が見えなくなり残念だ」(サントリービール・西田英一郎社長)と、ライバル首脳からも苦言を呈されていた。
しかし、アサヒが開示していた19年の販売数量と、20年以降も開示している他のビール大手の数字から、アサヒの販売数量とシェアが算出できる。
20年1~6月のビール類市場は前年同期比で約90%とされ、市場全体の販売数量からキリン、サントリー、サッポロビールの販売数量を差し引くと、アサヒの販売数量とシェアを導ける。
ダイヤモンド編集部が試算したところ、20年1~6月の市場シェアはキリンが37.6%のところ、アサヒは34.2%。3.4ポイントの差をつけてキリンが逆転したのだ。
キリンとアサヒの首位交代には主に2つの要因がある。