新聞印刷用の輪転機最大手、東京機械製作所の株式を4割近くまで買い増した投資会社、アジア開発キャピタル。そのファンドを率いるアンセム・ウォン氏が初めてメディアのインタビューに応じ、買収の狙いを明かした。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)
「純投資」から「支配権の取得」へ
東京機械の事業改善計画を持っている
――東京機械製作所(以下、東京機械)が、10月22日の臨時株主総会で買収防衛策を諮ります。この防衛策導入への受け止めは。
理不尽さを感じている。というのも、こちらは東京機械の経営陣に対し、ずっと友好的な姿勢を示してきたわけです。
8月27日午後5時から約1時間、東京機械の経営陣と初めての面談を行いました。その際、私は「輪転機の事業を大切にしたい」と何度も伝えました。ところが、その面談があった翌営業日(30日)の午前9時、東京機械は防衛策の導入を適時開示しています。つまり面談前から既に防衛策の準備をしていて、私の意見など聞く気はなかったということでしょう。
――東京機械はアジア開発キャピタル(以下、アジア開発)の議決権行使を認めない意向です。
株主平等の原則に反する。これが許されるなら、おそらく日本の株式市場に対する投資家の興味が失われてしまう。
――アジア開発は東京機械株の保有目的を「純投資」から「支配権の取得」に変更した。東京機械の経営権を取得する狙いは何か。
われわれの目的は、東京機械の企業価値と株式価値を向上させることです。
新聞社も(買収防衛策に賛成推奨した議決権行使助言会社の)ISS(米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ)も、要するに「アジア開発が東京機械株を買う意図を明らかにしていない」と指摘していますが、われわれは既に東京機械の事業改善計画を持っています。
ただし、デューデリジェンス(投資や買収などの際に対象会社の価値やリスクを把握する調査)を行っているわけではないし、東京機械の内部情報が分からない状況では深い議論もできない。われわれは支配株主として、いきなり現経営陣を全員クビにして全く違う経営をやるわけではなく、今あるものを尊重して連続性の中で改善していくという話をしている。