再分配のための「バラマキ政策」は悪くない
分配原資の財源確保の時期が重要

 再分配のための「バラマキ政策」は悪いものではない。問題は、いかに公平かつ効率的にばらまくかと(ベーシックインカムや基礎年金の全額税負担などを推奨する)、「適切な時点と形で」財源を確保するかだ。

「バラマキ政策」は、国民にお金を広くばらまくので、経済全体では「負担力」が増加しているはずであり、課税その他による「財源」は必ずある理屈だ。問題は、「バラマキ」と「財源」の受益者・負担者であり、差し引きの「再分配」の効果について社会的にどのように合意するかだ。

 岸田氏の金融所得課税見直しには、分配の財源の一部を直ちに増税でカバーしようとした点にも問題があった。これが「金融所得課税の税率引き上げがダメ」な二つ目の理由である。端的に言って、今は増税よりも赤字国債の発行による財源調達の方が適切だ。

現役の財務事務次官による
「バラマキ合戦批判」は歓迎すべき

 財政の問題については、財務省の現役事務次官である矢野康治氏の「文藝春秋」(11月号)への寄稿が話題になっている。「最近のバラマキ合戦のような政策論」を聞いて、財政の将来を心配する内容の、現役官僚から国民への意見具申だ。

 問題の当事者や事情を知る人からの意見の発表は、立場を問わず歓迎すべきだ。本件で、矢野氏が更迭されるような狭量な国ではあってほしくない。

 自民党の高市早苗政調会長は「大変失礼な言い方だ」と批判したらしいが、「バラマキ合戦」くらいの表現に怒る必要はない。

 ただし、現在は基礎的財政収支(プライマリーバランス)にこだわるべきではないという高市氏の意見の方が圧倒的な正論である。