このようにネット広告は一大市場となっているのだが、冒頭のような代物があふれ、質が低く品格のない広告も増加している。特にコロナ禍に入ってから、その傾向が目立ち始めたという声も多く、コンプレックスを刺激する広告をやめるよう請願する署名活動も行われた。コロナ禍で、このような露悪な広告が目立つようになった理由を三上氏は次のように話す。

「YouTubeも含め、ネット広告は基本的にオークション形式で配信されます。自動的に最も値段が高い広告を配信する仕組みとなっているため、当然予算規模が大きい企業が有利です。しかし、コロナによって各企業が広告費をカットもしくは広告自体を減少させていきました。となると、入札する企業の数や相場が下がり、今まで目立たなかった怪しい商品を扱う広告が安い単価で表示されやすくなったと思われます。このような広告は景品表示法、薬機法、消費者安全法、特商法に触れるものが少なくありません」

 不快広告は急に現れたわけではない。古くはスパムメールから始まり、Webサイトを量産してSEO、SNSでのアフィリエイト投稿などを経て、現在のディスプレー広告へと主戦場を変えてきたのだ。

多くの事業者が関わる
ネット広告配信の仕組み

 三上氏によれば、無法状態の一因はアフィリエーターや広告代理店にあるという。

「アフィリエーターは商品やサービスを紹介して、購入されたり会員登録が行われたりするとお金がもらえます。彼らの多くは個人や零細企業なので、一部ではガバナンスも効かないし、法律無視のやり方をして稼ぐ。売り上げを上げるために誇大な効果をうたい、痩せ薬などの記事広告をWebサイトに出していくのです。また広告代理店もクリック数を稼ぐために露骨な表現やインパクトのある画像を使った広告をそのまま配信する。悲しいことにそのような表現の方が人の目に留まるので、クリックされやすい側面もあるのです」