元アメリカ大統領補佐官は
来年2月以降が危険と予測

 臨時国会が召集され、岸田文雄氏が第100代内閣総理大臣に指名された10月4日、アメリカでは、ある元政府高官の発言が波紋を拡げた。発言の主は、ドナルド・トランプ政権で国家安全保障担当の大統領補佐官を務めたハーバート・マクマスター氏だ。

 ワシントンにある保守系のシンクタンク、ハドソン研究所で日本部長を務めるマクマスター氏は、中国による台湾侵攻の可能性について、来年2月の北京冬季オリンピック終了後に「危険な時期に入る」とメディアに語ったのである。

 ハドソン研究所には、2024年のアメリカ大統領選挙に出馬がうわさされるマイク・ポンペオ前国務長官も所属している。ポンペオ氏はCIA長官経験者だ。マクマスター氏も元陸軍中将で、イラク駐留軍司令官の特別補佐官やアフガニスタン駐留軍合同調整機動部隊の司令官を歴任した人物である。それだけに、この発言は関心を持って受け止めるべきだろう。

 マクマスター氏の発言から2日後の10月6日、今度は台湾の国防部が、「中国は早ければ2025年にも台湾海峡周辺の封鎖能力を完備する」との報告書を、台湾の国会に当たる立法院に提出した。

 また、10月8日には、アメリカの有力紙、ウォールストリート・ジャーナルが、「アメリカの特殊部隊と海兵隊が、少なくとも過去1年間にわたり、台湾で秘密裏に台湾軍との合同訓練を行っている」と報じている。

「台湾有事」が6年以内に
起きる可能性がある理由

 筆者は、これらの情報に接し、今春までアメリカ軍の中でも最大規模を誇るインド太平洋軍の司令官を務めたフィリップ・デービッドソン海軍大将(当時)のアメリカ議会での証言を思い出した。

 3月9日、アメリカ連邦議会上院で軍事委員会の公聴会に出席したデービッドソン氏は、「6年以内に、中国が台湾を侵攻する可能性がある」と明言した。

 この「6年」という期間は少し中途半端に見えるが、実は奥が深い。すでに式典が終了した中国共産党の100周年が今年2021年。6年後の2027年には中国軍(人民解放軍)建軍100周年という節目を迎える。

 その間に、中国では3隻目となる空母が進水し、簡単には迎撃できない極超音速滑空ミサイルの完成度が高まる。サイバー攻撃能力や電磁パルス攻撃能力も飛躍的に向上する。