尾原 すごい、わかりやすい! 鳥肌が立ちました。

入山 共感したいし応援したいから、そこにお金を払いますと。

 確実にその流れがきているので「クラウドファンディング」が出てきて、アメリカでは証券取引アプリを運営する米国スタートアップの「ロビンフッド」が出てくる。さらに、僕にはよくわからない謎のスニーカーに、共感した若い人が高いお金を払うという(笑)。

 そう考えると、プロセスエコノミーはまさに共感を得てお金を集めることそのものです。本の冒頭に書いてある、けんすうさんの「最終製品の話」って費用対効果のことですよね。

尾原 そうですね。

入山 特に若い方は、費用対効果はもうどうでもよくて、応援したいかどうかなんですよね。

尾原 確かに。とてもわかりやすい説明ですね。プロセスエコノミーの帯には「良いモノだけでは稼げない時代の新常識」と書いてあります。これは提供者目線なんですよね。

 提供者側の目線で、「安くて良いモノをみんな作れるようになってしまったから競争ができないし、価格勝負がヘトヘト競争になる」と言っています。

 それを需要家目線で考えると、若い方は生まれた時からたくさんのコンテンツが無料で使えたり、安い値段で映画が見られたりする。それが当たり前の時代で育っているから、費用対効果で考えることがない。

 じゃあ何の物差しが育ったかと言うと、ネットにつながっているから「共感や応援の感度が育っている」と考えればいいですよね。

入山 そうです、間違いないです。

尾原 これ、プロセスエコノミーの章に足したいですね(笑)。

入山 あははは(笑)。

尾原 そうすると、入山先生が説明するのがラクになる。

入山 ラクになりますね(笑)。確かにこの尾原さんの本はどちらかと言うと「ビジネスサイド」の話ですが、「需要サイド・消費者サイド」でなぜプロセスエコノミーの機運が起きているかと言うと、今話したような理屈ですね。

尾原 そうですよね。

 例えば、さっき入山先生が「よくわからない」と言っていた謎の靴(オールバーズ)は、フェアトレードのウールを使っています。これって軽くて気持ちがいいんですよね。

 物語が伝わりやすいようにプロダクトの中でこだわっている。これはユーザーが敏感になっているから、「伝え方に力を入れないと伝わらない」ということでもありますね。 

入山 そうです。だから今さら「費用対効果マーケティング」はありえません。

「これだけコストがかかっていて、これだけの価値があるから、これだけ払ってね」という時代は完全に終了ですよね。みんなそこにお金を払わないから。