「主流の経済学は『誰もが知っている』ことは真実だとの見方にあふれているが、実のところ、これは非常にばかげている」この発言は評論家のツイートでも、学者のブログ投稿でもない。主流経済学の総本山である米連邦準備制度理事会(FRB)が公表した研究論文の冒頭の一節だ。スタッフエコノミスト、ジェレミー・ラッド氏が執筆した論文は、FRBが楽観するインフレ見通しについて、欠陥とされる点に焦点を当てている。だが、ラッド氏の矛先は経済学の分野全体にも及んでおり、エコノミストは事実ではなく、自らの経済モデルや理論に適合するとの理由から、定期的に仮説を立てていると批判している。こうした批判は今に始まったことではない。今週ノーベル経済学賞の共同受賞が決まったカリフォルニア大バークレー校のデービッド・カード氏(カナダ出身)は、30年近く前に行った最低賃金に関する研究が評価された。経済学の教科書で言われている説とは異なり、最低賃金を引き上げても、低賃金の雇用が減ることはなかったことを突き止め、論文は大きな影響を与えた。