欧州の記録的なガス高騰は、域内のインフレ率に驚くほど限定的な影響しか与えていない。だが、将来的には影響はより顕著になるかもしれない。UBSの分析では、欧州スポット(随時契約)市場のガス卸売価格は今年に入り、ほぼ3倍に値上がりしたが、一般世帯向けの平均小売価格は約9%の上昇にとどまっている。同行のエコノミスト、アナ・ティタレバ氏は、ガス値上がりが域内インフレ率を推定0.4ポイント程度押し上げているとみている。これに対し、石油価格は50%値上がりと、上昇幅はガスを下回るものの、インフレ率の押し上げ効果は0.6ポイントだ。UBSは今年のユーロ圏のインフレ率を2.4%と予想している。これは欧州中央銀行(ECB)が目指している2%の目標を上回る。最大の押し上げ要因はエネルギー価格で、現在の高騰による影響と極めて低い水準にあった前年のベース効果の両方が含まれる。ECB当局者は米連邦準備制度理事会(FRB)と同様、足元のインフレ加速は「一過性の」要因によるものとの見解を示しているが、金融市場ではここ数週間に利上げ開始予想を前倒しする動きが出ている。