東京一番フーズは、1996年10月の「とらふぐ亭」1号店開店以来、ふぐ=高級食材という既成概念を打ち破り、50店舗体制を実現した。坂本社長は、将来独立を考える社員を後押しし、本物の「商売人」へと成長させるために、社内に「塾」を開いている。自ら20代で起業して苦労した経験をもとに、多くの起業家を養成するのが目的だという。

産地研修でとらふぐの歯を切る

坂本大地氏
株式会社東京一番フーズ代表取締役社長 坂本大地氏

 「東京で根づくはずがない」との酷評も打ち破り、「とらふぐ亭」は50もの店舗を展開することができました。しかし、ふぐ料理における市場規模は首都圏だけでもおよそ400億円。ここに私どもの伸びしろはまだまだ残されていると考えています。

 とはいえ現在の環境下では、積極的な拡大戦略を続けるより、一店舗一店舗の真の実力を高めるような見直しや取り組みを重視しています。また、社員同士の団結意識を醸成するため、入社1年目から3年目の社員を中心に、縦横斜めと幅広く交流できる機会を増やすよう努めています。最近では社員およそ60人で海に遊びに出かけたりもしたようですよ。社員同士の関係のよさはわが社の魅力の一つといえるのではないでしょうか。

 また、1泊2日の「長崎研修」では、産地に直接乗り込んで地元の方々のお仕事をお手伝いさせていただいています。とらふぐに非常に鋭利な歯が生えていることはご存知でしょうか。そのまま放っておくと、お互いのかみ合いによって傷がついてしまうことがあるんですね。きれいな状態で出荷まで育て上げるためには、1匹ずつ上下の歯を丁寧に4回から5回切らなくてはならないんです。非常に骨の折れる作業なのですが、社員には研修のなかでそういったことを体験してもらいました。このように産地の方の仕事を肌で感じるなかで、社員の意識は自然と向上します。

自らの起業失敗体験がベース

 私は社員に成長してもらいたいと願っています。「成長しなさい」というメッセージは常に伝えておりますし、そのために若手のころから大きな仕事に挑戦できる環境を用意しています。また、夢を持って仕事に取り組む社員が多いのも事実です。彼らには東京一番フーズの環境を活用して経験を積み、ゆくゆくは、私がそうであったようにぜひ起業をしてもらいたいのです。