公立福生病院「透析中止裁判」で明らかになった、患者死亡までの経緯黒部市民病院腎センターの様子 写真提供:黒部市民病院腎センター吉本敬一所長

2018年8月、公立福生(ふっさ)病院(東京都)で女性患者が腎透析を続けるために必要な手術を拒否したことで、透析が中止になり死に至った。2021年、家族が病院を提訴した民事訴訟は裁判所から和解勧告が出され、10月5日、和解が成立した。今後、病院はどんな点に留意すればいいか。裁判について、2回に分けて詳報する。(医療ジャーナリスト 福原麻希)

公立福生病院の対応を
時系列でふりかえる

 2021年7月、東京地裁(桃崎剛裁判長)は訴えられた公立福生病院に不十分な点があったと判断し、同院へ改善策を約束させる和解条項と和解金の支払いなどを勧告した。10月、原告・被告ともに合意した。裁判と取材で得た情報から、本件の概要を紹介する。

公立福生病院「透析中止裁判」で明らかになった、患者死亡までの経緯女性患者と2つの病院の関係(筆者作成)
【女性患者(死亡時44歳)】
●2001年、妊娠中に糖尿病と診断されたが、「治療費を支払えない」という理由で治療を受けなかった。その頃、「うつ病」を指摘されたことがあった。
●2014年、糖尿病の合併症で腎不全となり血液透析(以下、透析)を開始。週3回、透析専門施設へ通院。半年に一度、シャント(透析装置へつなぐための出入り口)管理のため地域病院を受診。2015年からは透析専門施設の依頼で公立福生病院が管理、患者は2018年まで6回受診。
●腹膜透析や血管内治療、人工血管は難しい状態。外科医が生体腎移植や献腎移植の可能性を考慮し、別の大学病院を紹介したこともあったが、うまくいかなかった。そこで、「いまのシャントが使えなくなった場合は、手術で頸部(首)にカテーテルを入れて(カフ型カテーテル留置)透析を受けることになる」と外科医は女性患者に説明していた。
●2018年8月、シャントが閉塞して透析ができなくなり、透析専門施設から公立福生病院へ緊急受診依頼。外科医がカテーテル手術の準備をして、病院で検査をしたところ、シャントから肩の血管まで血栓が詰まっていた。そこで、外科医が手術の説明を始めたところ、女性患者が「その手術は受けなければいけないのか」と質問をした。
●この1週間前、女性患者は別の地域病院で脚(下肢静脈瘤)のカテーテル手術を受けた。ところが、このとき全身麻酔状態だったにもかかわらず、ひどく動いたため、担当した医師から「あなたの手術は二度としたくない」と叱責されたことがあった。
公立福生病院「透析中止裁判」で明らかになった、患者死亡までの経緯女性患者の透析が中止になる経緯(裁判と関係者取材から筆者作成)
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 8月9日、外科医が女性患者に手術の説明をしたところ、女性患者は「手術はしたくない。もう透析はやりたくない。このシャントがダメになったら、やめようと決めていた」と話した。