話題のサブスクモデルだが
向いていないビジネスも
一方で、サブスクリプションモデルには向いていない製品・サービスもあります。たとえば、数年に1回、あるいは一生に1回しかニーズがないものには不向きでしょう。ウェディング・お葬式などの冠婚葬祭や引っ越し、不動産の売買などに関するサービスでは、月額定額制というのは、なかなか考えにくいことです(ちなみに、こうした頻繁には経験しないイベントや手続きに関するサービスでは、事業者と利用者との間に情報格差が生まれやすく、適切でない価格で利用者に負担を強いるようなケースも多くなりがちです)。
シーズナルなもの、ある特定の時期だけに需要が集中するようなものも、その時期以外は契約しておく必要がないため、サブスクリプションには向きません。家庭なら年に1回の節句や衣替え、企業なら年に1、2回の人事評価や報酬設計といったイベントに関わるサービスがそれに該当します。
逆に頻繁に単体で購入できるものも、サブスクリプションモデルである必要はないように思います。清涼飲料水などはその典型例で、ある製品の人気がなくなり、あるいは自分に必要がなくなれば、その時点で購入することはなくなり、ユーザーにとっては、わざわざサブスクリプションという仕組みを利用する利点がないからです。
ところがこの直感に反して、日本コカ・コーラは「Coke ON Pass(コーク オン パス)」というサブスクリプションサービスを展開しています。Coke ON Passは専用アプリとの連携により、月額2700円を支払えば対象自販機で1日1本、毎日好きな清涼飲料水が選べるというサービスです。
このサービスを「喜んで使う」というユーザーもいれば、「元を取るのが大変」というユーザーもいて、賛否両論あるようですが、確かにユーザーが「ほかのブランドではなく、コカ・コーラの清涼飲料水を飲もう」と考えるようになる力は働くかもしれません。コカ・コーラがどのような背景からサービスを進め、今後どのような戦略があるのか、大変興味深く、サービス提供者側の視点で見れば、なかなか面白い試みだと思います。