「福祉事務所は新庁舎の外へ」という案が
突然浮上した経緯

 中野区新庁舎の建設計画は、2010年から検討が開始されていた。地域全体のまちづくり計画、区全体の施設再編計画と関連する形で、2014年には「新しい区役所整備基本方針」が取りまとめられた。2015年には、新庁舎を建設する用地として、現庁舎の北西にあった中野体育館の跡地、および元国有地を使用することが決定された。

 ちなみに現在の中野区役所は、南北に延びる中野区の概ね中心にあり、JR中野駅から徒歩3分程度。アクセスは極めて良好なのだ。新庁舎のアクセス利便性も、同等となる。

 ついで、新庁舎自体の機能・ゾーニング(建物内の区分け)・導線などが詳細に検討された。重要視されたのは「ワンストップ」、来庁者が「縦割り」に合わせて右往左往させられないレイアウトだった。2019年3月、「中野区新庁舎整備基本設計」として取りまとめられた検討結果を見ると、地下2階・地上11階建ての新庁舎では、1階から4階が住民生活に直接かかわるゾーンであり、生活保護の窓口は1階に予定されていた。

中野区「生活保護」置き去りに抗議殺到、区役所移転問題の顛末出典:中野区資料

 ところが、2020年9月に公表された資料「中野区新庁舎整備事業(実施設計)」を見ると、生活保護の窓口として確保されていたはずの1階のスペースは「執務スペース」とされており、庁内に「生活保護」の文字はない。

中野区「生活保護」置き去りに抗議殺到、区役所移転問題の顛末出典:中野区資料

 実はこのとき、福祉事務所(生活援護課)は、区の施設の一つである教育センターへと移転する方針となっていた。しかしながら、同年10月の区議会での審議、具体化に向けた検討を通じて、教育センターの建物の堅牢性や構造の問題から見直しとなった。