粘り強く声を上げ続けた
区民たちと議員たち

 中野区議として福祉の充実に取り組む浦野さとみさん(日本共産党)は、一連の成り行きを振り返り、福祉事務所が一体的に新庁舎に移転することになったのは「ギリギリの状況の中、一人ひとりの方が声をあげ行動した結果」だという。

 中野区の現庁舎では、生活保護の窓口は2階にある。仮設の壁やカウンターテーブルと壁面の間の狭い通路の奥に、窓口と待合室がある。仮設の壁の向こう側には、執務スペースや書類置き場がある。仮設の壁は、エレベータホールも食堂も侵食している。さらに、5階と7階にも福祉事務所の執務スペースがある。中野区の現庁舎が狭小すぎる結果である。だから、もともとの新庁舎の計画では、アクセス性のよい1階の奥に、プライバシーを確保しながら福祉事務所を設置することになっていたはずだった。

 ところが2020年の計画では、新庁舎から福祉事務所の窓口が消えた。2021年7月の案では、福祉事務所の窓口は社会福祉会館と新庁舎に分割されることとなった。

「支援団体の皆さんは制度利用者の立場で、声を上げ、パブコメ(パブリック・コメント)を呼びかけました。新庁舎に福祉事務所を全部入れないということは、そのつもりがなくても、差別のメッセージになってしまいますから」(浦野さん)

 もちろん、区議たちは黙っていたわけではなく、複数の会派の議員が声を上げ、再検討を求め続けた。パブリック・コメントの送付など、自らに可能な方法で声を上げた区民もいた。10月の区議会でも、この問題に関する活発な議論が行われた。

「とにかく、一人ひとりができることを懸命に頑張った結果だと思います」(浦野さん)

 ここで、制度利用者と並ぶ当事者、行政職員たちを忘れるわけにはいかないだろう。