仙台の筋弛緩剤事件は無期懲役
久保木被告は極刑の可能性が高い

 久保木被告の量刑を予想する上で参考になる事件がある。00年に仙台市の北陵クリニックで起きた「筋弛緩剤点滴事件」だ。元准看護師の守大助受刑者(50)が89歳女性に対する殺人と4件の殺人未遂の罪に問われ、無期懲役が確定した。

 いずれも医療従事者で、点滴に薬物を注入したという点で酷似している。罪に問われたのは5件だが、クリニックでは19~20年にかけて20人前後が点滴を受けて容体が急変し、不審死したり重篤な症状に陥ったりしていたことを宮城県警が確認。事実、近所の特別養護老人ホームでは、発熱などの症状で診察を受けた入所者が、点滴を受けた後に容体が急変し死亡する事例が相次いでいた。

 検察側は動機について、救命措置が得意で待遇面で優遇されると期待していたが、資格や経験年数相応だったため不満を募らせたと指摘。自ら容体急変の状況を作り出して救命措置を施す自作自演をしていたが、後に院長を困らせるためエスカレートしたなどと説明していた。

 守受刑者は獄中から無実を主張しているが、検察側指摘の通りであれば久保木被告と同様、動機については身勝手極まりないとしかいえない。血液という物証が残っていた事件しか立件されていないが「20人前後」という点も共通している。

(1)~(11)で決定的に違うのは、殺害したとされる人数と、守受刑者が無実を主張していたため、当然ながら謝罪も反省も口にしていない点ぐらいだ。

 久保木被告はいずれの事実関係も認めており、焦点は有罪か無罪かではない。死刑か無期懲役か、である。裁判員制度が導入され、最高裁は量刑データベースを裁判員に開放している。死者が1人の守受刑者が無期懲役であれば、いかに謝罪の言葉を口にし、反省していることを考慮したとしても、極刑が不可避なのは間違いないだろう。