「お金ちょうだい」と繰り返し申請するリピーターの存在

 補助金が「成長」には寄与しないという指摘は、今年11月1日に開催された、財務省の有識者会議「財政制度等審議会」でも出ている。

 この場で、中小企業への補助金に対する2つの問題点が指摘された。

 一つは、新型コロナ禍で打撃を受けた中小企業の事業転換の費用を支援する「事業再構築補助金」。補助額は最大1億円、補助率も費用の最大4分の3という手厚さだが、当初ニーズがあると見ていた飲食・宿泊業が2割程度にとどまっていた。つまり、「それほどダメージがない中小企業」が、「こんなおいしい制度、利用しなきゃ損だろ」と飛びついていた可能性があるのだ。

 二つ目は先ほど効果分析された「ものづくり補助金」だ。なんと、直近3年で採択事業者を調べると、15%が過去にもこの補助金を受け取った「リピーター」だったのだ。

「生産性向上するからお金ちょうだい」と言って金を受け取りながら、大したこともせずに相手が忘れたころに、また「生産性向上するからお金ちょうだい」と繰り返し申請しているような、不届な中小企業が存在している恐れがあるのだ。

 断っておくが、このような問題があるから中小企業への補助金をやめろ、などと主張したいわけではない。世界的企業も最初は中小企業だ。「成長」する企業を国が支援するのは当然だ。

 が、現在の中小企業支援の補助金は、残念ながら倒産を回避するセーフティネットにしかなっていない。いわば、「法人の生活保護」である。

 だから、そこに巨額の予算を突っ込んでも、生活が楽になるのは経営者だけで、従業員の賃金に還元されることもなければ、日本経済へのプラス効果もない。どんなに生活保護予算を手厚くしても、経済対策にならないのと同じだ。

 生産性向上なんて関係ない、賃金なんて低いままでいいということなら、現在の方針でいい。

 しかし、中小企業支援を「経済対策」と位置付けるのならば、財務省が主張するように「制度の根本的な見直し」が必要だ。巨額の税金を投じるのだから、何に使って、どのような効果があったのか、などをしっかりとチェックして、申請時と異なる使い方をしているようなことがあればきっちり返済させるべきだ。