安いニッポン 買われる日本#2Photo:felixR/gettyimages

日本のものづくり産業の多くは、韓国や中国といった新興国との競争に敗れ、国際競争力を失っている。そんな日本に残された数少ない戦える産業の一つが自動車だ。ところがこの自動車業界、給料が「べらぼうに安い」のだ。特集『安いニッポン 買われる日本』(全24回)の#2では、日本の自動車業界が抱える「給料安過ぎ問題」をえぐる。(ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)

自動車は勝ち組なんかじゃない
給料が安い実態をグローバルデータで解明

 鉄鋼や半導体、家電といった産業が新興国に追い上げられて沈んだ今、日本が国際的競争力を維持している産業といえば自動車だ。

 自動車を中心とする輸送用機器の日本からの輸出額は2020年に14兆4562億円、輸出総額の2割強に上った。自動車関連の産業で働く人は、日本の全就業人口の1割近くを占めている。

 個別企業で見ても、トヨタ自動車が世界販売台数952万台(20年の実績、ダイハツ工業と日野自動車を含む)を誇り、独フォルクスワーゲンを上回る世界首位メーカーとなっている。自動車は日本の基幹産業であり、経済の浮沈を大きく左右するといってよい。なのに、この自動車産業が勝ち組とは断言できないから問題だ。

 自動車産業の未来に暗雲を垂れ込めさせているのが、「給料が安い」という現実である。にわかに信じ難いかも知れないが、グローバルに比較すると目を覆うほどの安さが一目瞭然だ。日本の自動車業界の給料がどれほど「安い」か、次ページのデータを見れば、自動車業界で働く人も、それ以外の人も慄然とすること間違いない。

自動車レーダーチャート