欧州の一部地域で石炭発電所がフル稼働し、まれに見る高収益を上げている。二酸化炭素(CO2)排出量の削減に向けた取り組みは逆風に見舞われた格好だ。欧州の気候政策においては、これはあってはならないことだ。欧州連合(EU)と英国はグラスゴーで開催された気候変動サミットで、世界の指導者たちに石炭の消費を止めるよう働きかけたが不成功に終わった。EUも英国も、石炭火力発電所のような汚染源の利益を削り、より環境に優しいエネルギーに資本を向かわせることを目的とした排出権の取引市場を持つ。欧州の炭素市場はここ何年も、まさにそうした機能を果たしてきた。2020年には石炭発電所の閉鎖が相次ぎ、石炭の消滅が予想されていた。ところが、天然ガスの不足で、欧州は来春までに発電・暖房用の燃料が不足する危機に陥った。不足分を補うために、石炭と、褐炭と呼ばれる汚染度の高い石炭を使った発電が再開されている。