次なる半導体激戦区はARグラス

 このような製品メーカー側の動きのあおりを受けて、窮地に立たされているのが、製造プロセスの微細化で後れを取り、オンチップの電圧レギュレーターによって発熱と消費電力を抑えるRaptor Lake CPUファミリーの市場投入も2022年の後半になりそうなインテルである。半導体の技術者にとっても、制約の多い汎用CPUよりも、特定用途向けに自由な発想を試すことのできる製品メーカー内でのチップ開発のほうが魅力的だとすれば、中・長期的に見て優れた人材確保に苦労するようになる状況も考えられよう。

 また、マイクロソフトはすでにHoloLensでARとVRにまたがるMR(Mixed Reality)分野、グーグルはGoogle GlassによってAR分野の製品を、共にエンタープライズ向けに販売しているが、採用されたSoCは、それぞれクアルコムのSnapdragon 850とSnapdragon XR1という汎用品だ。一方アップルは、うわさされるVRゴーグルやARグラスを自社製の半導体によって実現してくることは確実といえ、特に後者では高度なAI処理をオンデバイスかつ低消費電力の下で行えることが、製品の優位性や競争力を高める上で重要なポイントとなる。この点は、マイクロソフトやグーグルも重々承知していると思われ、そこに向けた半導体開発を水面化で進めているものと考えられる。

モバイルコンピュータ向けのQualcomm Snapdragon 850を採用したマイクロソフトのMRゴーグル、HoloLens 2 Photo:Microsoftモバイルコンピュータ向けのQualcomm Snapdragon 850を採用したマイクロソフトのMRゴーグル、HoloLens 2 Photo:Microsoft
VR/ARデバイス向けのQualcomm Snapdragon XR1を採用したグーグルのARグラス、Google Glass Enterprise Edition Photo:GoogleVR/ARデバイス向けのQualcomm Snapdragon XR1を採用したグーグルのARグラス、Google Glass Enterprise Edition Photo:Google

 アップルシリコンの開発も、ここ数年のスパンでは、VR/AR製品への搭載を最重要課題として進められているはずだ。他社も含め、半導体開発の成否が今後のビジネス拡大の命運を握っていると言っても過言ではないのである。