リモートワーク、残業規制、パワハラ、多様性…リーダーの悩みは尽きない。多くのマネジャーが「従来のリーダーシップでは、もうやっていけない…」と実感しているのではないだろうか。
そんな新時代のリーダーたちに向けて、認知科学の知見をベースに「“無理なく”人を動かす方法」を語ったのが、最注目のリーダー本『チームが自然に生まれ変わる』だ。
部下を厳しく「管理」することなく、それでも「圧倒的な成果」を上げ続けるには、どんな「発想転換」がリーダーに求められているのだろうか? 同書の内容を一部再構成してお届けする。

業績に関係なく「冷めきった職場」を生む2つの条件Photo: Adobe Stock

それは「心から自分自身がやりたいこと」か?
──ゴール設定の条件(1)

「報酬や懲罰などの外的刺激をもとにしたリーダーシップは、もはやうまく機能しない」──このことは世の中の多くのリーダーが実感しつつあると思います。

 では、いったいどうすればいいのか?

 これまでの連載でみなさんと一緒に考えてくるなかで見えてきた一つの答えが、部下の「行動」ではなく「認知」を変えるべきだということでした。

 認知科学で言うところの「内部モデル」、もっとくだけた言い方をするなら「ものの見方」が変わらないかぎり、部下やチームの本質的な行動変容は起こりません。

 リーダーが少しでも目を離せば、彼らの行動は「元どおり」になろうとします。

 では、いったいどのようにすれば、世界の認知を劇的に変えることができるのでしょうか?

 われわれの「世の中の見え方」を抜本的に変えるためには、どんな手立てが有効なのでしょうか?

 このとき、最も有望なのが「ゴール設定」です。

 たとえば、人間はVRゴーグルを装着するだけで、「ジェットコースターに乗っている」とか「スカイダイビングを楽しんでいる」という認知をプロジェクション(投影)し、その世界に没入することができます。

 それと同様、別の現実を「ゴール」として意識的にデザインし、そこに圧倒的な臨場感を抱けるようになれば、世界の認知の仕方(内部モデル)は変更できるのです。

 ところで、内部モデルの更新を引き起こし得るゴールは、次の2つを満たしていなければなりません。

 条件(1) 「真のWant to」に基づいていること
 条件(2) 「現状の外側」に設定されていること

 まず、人間はつねに整合性をチェックする生き物です。

 設定されたゴールが「本音中の本音で住みたいと思える世界」になっていないかぎり、つまり、自分自身の「真のWant to(やりたいこと)」と辻褄が合わないかぎり、そこに没入することなどできるはずがありません。

 したがって、ここで言うゴールとは、「今期の売上を達成する」とか「30代のうちに役員に昇進する」といった個別の目標ではないし、そもそも仕事の領域だけに限定されるものでもありません。

「こんなふうに生きてみたい!」と本気で思えるようなオールライフ型(人生全体に関わるような)のゴールであるはずです。

 これを組織経営の文脈で語り直したのが、いわゆる「パーパス(Purpose)」です。

 ここでもキーになるのは、「没入」が起きるほどのWant toがゴールに内在しているかという点です。

 たとえば、「世界から飢餓をなくす」というパーパスは、たしかに社会的には立派な志でしょう。

 しかし、経営者自身だけでなく、社員たちみんなが「飢餓がない世界」に真の臨場感を持てていないのであれば、それは単なる「絵に描いた餅」にとどまります。

 人・組織の内部モデルが書き換わることもないので、結果として誰も心から積極的に動こうとはしません。

 これが「なんちゃってパーパス経営」の深層で起きていることです。