リモートワーク、残業規制、パワハラ、多様性…リーダーの悩みは尽きない。多くのマネジャーが「従来のリーダーシップでは、もうやっていけない…」と実感しているのではないだろうか。
そんな新時代のリーダーたちに向けて、認知科学の知見をベースに「“無理なく”人を動かす方法」を語ったのが、最注目のリーダー本『チームが自然に生まれ変わる』だ。
部下を厳しく「管理」することなく、それでも「圧倒的な成果」を上げ続けるには、どんな「発想転換」がリーダーに求められているのだろうか? 同書の内容を一部再構成してお届けする。
「モチベーション幻想」に縛られていないか?
「やる気が足りない」「責任感が足りない」「そもそも人が足りない」
「本音が見えない」「本気が見えない」「そもそも顔が見えない」
「言われたことしかやらない」「言われたことをやらない」「そもそも誰も何も言わない」
リーダーには本当にいろんな悩みがあり得る。
前々回の記事でも示したとおり、これらの悩みの根幹は「熱量差の問題」にあると言えそうだ。
これを解決しようとするとき、ついわれわれは「どうやってモチベーションを高めればいいか」という発想にとらわれてしまう。
つまり、「悩みのかたちは数あれど、メンバーのモチベーションさえ高ければ、たいていのことは解決する」というわけだ。
これは最も多くのリーダーがとらわれている「幻想」である。
まずはこの考え方を捨てることが、リーダーシップをとらえ直す第一歩になる。
たとえば東南アジア諸国では、一流大学を卒業した現地エリートであろうとも、ほとんどの人が定時にはあたりまえのように帰宅しようとする。
決められた以上の仕事をしようとする人材はなかなかいない。
「せっかく優秀なのに……どうしてあんなにモチベーションが低いんでしょうね」
彼らの様子を見て、こんなことを言う人がいる。
日本では、いまだにダラダラと時間外勤務をする人を「がんばっている」と見なす風潮があるからだろうか。
彼らは、会社が定めた時間に会社が定めた仕事をしているだけだ。
それなのに、「モチベーション」というフィルターを通した途端、そこには「熱量差の問題」が存在するように見えてくる。
このようなギャップが実感されるのは、決して異文化間のことだけではない。
たとえば、スタートアップの創業メンバーのようなごく小さなチーム内であっても、「熱量差」が表面化することがある。
もともとは熱い志を分かち合っていたはずなのに、事業が軌道に乗ってきたタイミングで、「もうそんなに無理をしなくてもいいんじゃないか」と言い出すメンバーが現れる。
以前はいちばん情熱に溢れていたはずの人物が、突如として「モチベーション」を失うケースもある。