外出自粛による
利用者減少は底打ち

 各社の鉄道事業を細かく見てみると、第1四半期の定期収入はメトロを除き前年度同期を上回ったが、過去最多の感染者数を記録した第5波が直撃した第2四半期は全社とも前年同期を下回っている。

 昨年度の第1四半期は最初の緊急事態宣言が発出され、テレワークが一気に広まったことで定期券の買い控えが起きた。第2四半期以降は順次、通常営業を再開した企業が多く、定期券の利用が増えたが、昨年末から続く第4波、第5波を受けて再度、テレワークの導入が進み、定期券の売り上げが減少したと考えられる。つまり定期収入の減収は一時的なものではなく構造的なものになりつつあるということを意味している。

 一方、定期外収入は第1四半期、第2四半期ともに前年同期を大きく上回っている。特に第1四半期は最初の緊急事態宣言が発出された昨年度と比較して大幅に増加したが、第5波が全国を襲った第2四半期においても、関東各社は昨年度を上回っており、定期外利用については外出自粛による利用控えは底を打ったとみられる。

 鉄道事業の収支改善は割引のない定期外利用者がカギを握っている。緊急事態宣言の解除と各種制限の段階的な緩和により、鉄道利用者は目に見えて増えており、例えばJR東日本の対2019年度同期比の定期外鉄道営業収入は、9月の62.8%から10月は81.5%まで増加している。下半期に第5波を上回る感染者増加が起こらない限り、鉄道事業の収支は改善傾向に向かうだろう。