「多くの企業を受けろ」といっても
誰も理由を教えてくれない

 ところが、広くたくさん見るということを大学生は面倒くさがるものです。そんなとき、親はどのように子を説得したらよいのでしょうか。

 それには、「あなたには権利があるのにもったいない」という論法(そして、これは事実です)が有効かもしれません。人生において何も知らない状態で、企業説明会や企業のセミナーに参加して、「(知らないことを前提に)何をやっているのか教えてください」と聞くことができるのは、大学の就活中の1年だけなのです。大学生というのはその意味で、特権階級に属しています。

 私大なら、4年間で約500万円(文系学部)ほどの学費をわざわざ払って、その権利を購入していることになります。大学生にとっては周りも同じ条件なので、自分の置かれた境遇の有り難さはなかなかわからないものですが、その権利を行使しないのはもったいないことです。「あなたは特権階級なのだから、特権を活かしなさい」「大学生にのみ許される、今しか使えない権利を使わないのはもったいない」と、親ははっきり言うべきだと思います。

 仮に転職をする際に、受験する企業に対して「御社は何をやっている会社か教えてください」と言えば、間違いなく門前払いになるでしょう。しかし、大学生の間は企業側からどんどん教えてもらえます。世の中のことを知るという意味でも、適した時期だと考えます。

 就活のは始めに「たくさんの企業を見なさい、受けなさい」ということは誰でも言いますが、いろいろな会社を知らなければならない理由とそのための方法論(縦のつながりで見るなど)は教えてもらえないので、多くの学生は得心できないのです。親はそのことを踏まえ、理由や方法論も交えながらアドバイスをしてあげてください。

(ダイヤモンド・ヒューマンリソース HD首都圏営業局 局長 福重敦士、構成/ライター 奥田由意)