資生堂が世界88の国と地域で展開しているグローバルブランド「SHISEIDO」は、サーフィンの世界的な競技団体やトッププロサーファーと共に「SHISEIDO BLUE PROJECT」と銘打って海のサステナビリティ活動に取り組んでいる。社会課題の解決は企業にとってもはや当然の取り組みとなっているが、資生堂とサーフィンはにわかには結び付かない。プロスポーツと企業の関係に注目する池田純氏の新シリーズ。サーフコミュニティに着目したプロジェクトの成り立ちから実際の活動、そして今後の見通しについて、資生堂グローバルブランドユニット、グローバルマーケティング部の大山志保里氏に聞いた。

コミュニティ中心のマーケティングが長期と短期両方の価値をもたらす資生堂とサーフィンという意外な組み合わせのマーケティング

池田 私はプロ野球チームの代表を務めていた経験から、スポーツコミュニティと企業が結び付くことで生まれる社会的価値に注目しています。「SHISEIDO BLUE PROJECT」は企業活動として海の環境保全を実現するものとうかがっていますが、その中心にサーフコミュニティを置いている点がユニークだと思います。具体的にはどのような取り組みなのでしょうか。

コミュニティ中心のマーケティングが長期と短期両方の価値をもたらす資生堂グローバルブランドユニット グローバルマーケティング部
大山志保里
写真提供:資生堂

大山 このプロジェクトはサーフィンの世界的な競技団体であるワールドサーフリーグ(WSL)と同リーグが運営する環境保護団体「WSL PURE」、そしてトッププロサーファーの五十嵐カノア選手と協働で実行しています。BLUE PROJECTとはプロジェクトの総称で、ビーチクリーンや植樹などを中心としたサステナビリティ活動と日焼け止めを中心としたサンケア製品のプロモーションを両立させる取り組みとなります。

池田 いろんな選択肢がある中で、サーフィンに着目したのはどういった理由からでしょうか。日本ではメジャーなスポーツとは言い難いですし、資生堂とサーフィンという組み合わせも意外な印象です。

大山 まず、サンケア製品は女性に限らず、お子さまや男性にも使われ、日常からレジャーまで利用シーンが多様だという背景があります。ターゲットにはアクティブなライフスタイルを送っている人が多く、その層に認知を広げるために、2つのポイントに注目しました。

 まず、日焼け止めに対する動機です。これは日差しの強さを意識してもらう必要があります。もう1点は当社の日焼け止めが、水にぬれても効果が持続するという大きな特長を持っている点です。そうした中で、サーファーの方なら製品の質の良さを代弁してくれるのではないかというアイデアが生まれました。ちょうどそのタイミングでカノア選手から当社にアプローチがあり、とんとん拍子にWSLとのパートナーシップが決まったのです。

池田 ビーチクリーンや植樹活動といったWSL PUREとの取り組みも、WSLとのパートナーシップから始まったということですね。

大山 サーフコミュニティはサステナビリティについて非常に高い意識を持って活動されています。私たちもビーチをホームとするサーファーの方々と関係をつくっていく上で、一緒にビーチをきれいにして、そこで日焼け止めを使ってもらうということをやりたかったのですが、WSL PUREから、ビーチにとっては、そこをきれいにすることも大事だが、植樹はもっと重要だという話を聞きました。

 英語でデューンプランティングといいますが、植樹活動には、ビーチの近くに住む人々の命や暮らしを守るという効果があり、確かに清掃よりも重要なことだといえます。そこで、プロジェクトとして、ビーチクリーンに加えて、植樹活動にも取り組むことにしたのです。