時価総額でトヨタ自動車に迫るリビアン・オートモーティブ。同社を率いる創業者でCEOのR.J.スカリンジ氏はまだ38歳だ 時価総額でトヨタ自動車に迫るリビアン・オートモーティブ。同社を率いる創業者でCEOのR.J.スカリンジ氏はまだ38歳だ Photo:REUTERS/アフロ

 日本が過去30年間、経済力を停滞させたままでいるのはなぜか。本連載で度々指摘してきたように、企業経営の“巡航速度”を維持するために適した帰納法的経営から、ビジネスモデルなどを方向転換するときに必要な演繹法的経営への転換ができていないからである。

 帰納法的経営は、経験や知識を基に計画し、着実に実行する経営であり、ほとんどの既存事業は帰納法的経営だ。一方の演繹法的経営は、仮説と検証を繰り返し、未来の市場へ向かう。

 演繹法的経営を実践する上で日本企業が不得意なのが「投資」だ。経営のエネルギー源はお金だが、その扱い方は帰納法的経営では「予算」であるのに対して、演繹法的経営では「投資」である。事業の仮説あるいはビジョンの実現を先導するための資金投入が、演繹法的な投資だ。

 演繹法的投資では、不確実性によるリスクを抑えるために、仮説・検証のサイクルを経て、事業の確証が高まるに従って、タイミングよく投資を大きくしていく。

 具体例として一番分かりやすいのが、スタートアップ企業が新事業を立ち上げる際に、ベンチャーキャピタル(VC)などが投資するベンチャー投資だろう。