米国債の利回りは今年、大きく上昇した。だが、ここにきて利回りが頭打ちになりつつあるとの懸念も浮上している。
米連邦準備制度理事会(FRB)が事実上のゼロ金利政策を解除すると思われる日が、刻一刻と近づいているというのが大きな理由だ。
それ自体は利回りの押し上げ要因となる。償還期間2~7年の短・中期債ではとりわけその傾向が顕著なはずだ。
確かに、米7年債利回りは今年、0.643%から2日時点で 1.389%まで跳ね上がった。だが、FRBが向こう半年程度で利上げを開始すると予想される状況では、なお極めて低い水準だ。アナリストの分析では、債券利回りの動向は総じて、FRBが約1.5~2%を超える水準までは金利を引き上げることができないとの読みを反映している。
これに対して、FRB当局者はフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を長期的には2.5%まで引き上げると想定している。これは前回の利上げ局面で2018年に最終的に到達した水準だ。
投資家にとって、これはある意味、歓迎すべきことだとも言える。低金利環境が当面続くとの前提に立って、リスクの高い株式や社債を買い続けることができるためだ。一方でこれは、経済がぜい弱なため、FRBがリセッション(景気後退)を招くことなく金融引き締めを行うことが困難なことを示唆している。
TD証券のグローバル金利戦略責任者、プリヤ・ミスラ氏は、投資家の多くは現時点で、FRBが「何らかの理由からハト派でいたい」と考え、米金利の天井は低いままだと想定しているようだと話す。「仮に長期的な成長が弱いために金利の天井がここにあるとすれば、むしろリスク資産にとっては望ましくない」
ミスラ氏らのアナリストは、債券投資家が経済の先行きを悲観する大きな理由がいくつかあると指摘する。
まずは新型コロナウイルス禍が経済に長期的な打撃を与えた恐れがあることで、例えば労働参加率の低下などが挙げられる。
もう一つはサプライチェーン(供給網)の制約などを背景とするインフレ加速でFRBが早期の利上げを余儀なくされ、労働市場の回復が途上に終わるとの見方だ。実のところ、インフレが跳ね上がり、利上げ前倒しの思惑を投資家が意識するようになった春以降、米金利の天井に関する市場予想は切り下がっている。
ただ、さまざまな要因が債券市場のシグナルをゆがめていることもあり得るとして注意を促す向きもある。例えば、国内でさらに低い金利に直面する外国人投資家が相対的に妙味の大きい米国債を買い入れるといったことが影響しているかもしれない。
とはいえ、何が利回りを押し下げているとしても、インフレの高止まりが長引き、FRBが市場の想定以上に金利を引き上げるとのサインを出し続ければ、債券が売り込まれるリスクはくすぶるとの指摘は多い。
FHNファイナンシャルの金利ストラテジスト、ジム・ボーゲル氏は、債券市場の長期金利見通しに調整が入ると考える妥当な理由があると述べる。ただ、それが来年起こる公算は小さいという。FRBの資産買い入れ縮小(テーパリング)の完了時期や利上げ開始の発表がいつになるのかという、一段と差し迫った問題で投資家の頭がいっぱいになるとみられるためだ。
同氏は「FRBが基本的に火消しに追われている間は、ピカピカの消防車に乗って登場するFRBの姿に視線が集まるだろう」と話す。「焼失した建物の再建にはまだ考えが及ばないはずだ」



