保険と宝くじの
意外な共通点とは

 保険は、万が一の場合に非常に困った事態に陥る可能性がある人が、それを避けるために加入するものである。宝くじとは正反対であるが、「ワクワクする」かわりに「ハラハラ心配しなくて済む」と考えれば、同様の効果があると考えることができる。

 非常に小さな確率が大きく感じられるという上記の錯覚によって、本来はそれほど不安に感じる必要のないことでも不安に感じてしまう、という経験は誰にでもあるはずだ。そうした不安を保険が和らげてくれるのだとしたら、精神衛生にとても良いものとして、購入する価値があるということになる。

 もちろん、万が一の場合には、「保険に加入しておいて良かった」と思うだろう。それも、万が一当せんした場合に「宝くじを買っておいて良かった」と思うのと同じことだ。

 強いて違いを述べるとすれば、保険の中には必要のない保険があるということだ。例えば、独身の新入社員が生命保険に加入する必要はない。自分が死んでも誰も困らないなら、金銭面の不安を感じる必要はない。

 それでも不安で保険に加入するとすれば、それは確率を錯覚するのではなく、必要のないものを必要だと感じる錯覚だ。そうした錯覚による不安は、保険に加入することによって和らげるのではなく、深く考えることで不安を取り除くべきであろう。

 本稿は、以上である。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織などとは関係がない。また、わかりやすさを優先しているので、細部は必ずしも厳密ではない。