経済原則に反する賃上げ税制、賃金ダウンの「逆効果」現在の日本が直面している最大の課題は、長年にわたる賃金の停滞状況から脱出し賃金の持続的な上昇を実現することだ(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「岸田賃上げ税制」で、
賃金上昇への突破口が開けるか?

 現在の日本が直面している最大の課題は、長年にわたる賃金の停滞状況から脱出し賃金の持続的な上昇を実現することだ。

 岸田政権は賃金引き上げを最重要の政策課題とし、そのための手段として税制を用い、賃上げをして給与総額を前年度より一定以上増やした企業に対して、支払った額の一定率を税額控除することにした。

 では、これによって賃上げへの突破口が開けるだろうか?

 賃上げ税制は実は新しく作られた制度ではなく、昔からある。「所得拡大促進税制」という名称で、2013年に創設された。しかし、ほとんど利用されてこなかった。

 財務省の「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書」によると、17年度の適用件数は約12万件、適用総額は約3000億円にすぎない(19年度は約13万件)。

 つまり、賃金の引き上げに貢献しなかった。