――コミュニケーションを図る機会が多いのですね。

佐野 解体工事業は危険な仕事なので、注意喚起をするためにも、小まめにミーティングをする必要があるのです。

 従業員の安全を守るために、新たな手法も開発しました。その一つが、数十mクラスの高い煙突を解体する手法です。従来は重機が届かないため、足場を組んで人力で解体していましたが、危険が伴います。そこで人力を使わず、レッカー車を煙突の近くに据え、煙突を壊すアタッチメントをクレーンの先端に付けて、遠隔操作で解体するのです。弊社独自の手法で、特許を取得しました。

 最近では、高層ビルの解体に関しても、新しい手法を編み出しました。重機が届かない高層階の解体は建物の上にスタッフが上がり、人力で壊していたのですが、ビルの前に7mの盛り土をして、そこに重機を乗せて解体する手法を試みたのです。手間もコストもかかりますが、圧倒的に安全なので、今後も技術を改良しながら続けていきたいと考えています。

 その他、環境ISO14001、労働安全衛生ISO45001の認証も取得しました。

――安全な職場を追求したからこそ、成長できたのでしょうね。

佐野 それもありますが、成長の最大の要因は、小さな仕事でも一つ一つ真面目にやってきたことだと思います。お客さまがお客さまをご紹介くださることも多いですし、解体した住宅の隣に住んでいた方から「よい仕事をしていたので、うちも頼みたい」と言われたこともあります。「早朝から朝礼をしているのを見たから」と仕事を依頼されたこともありました。見ている人は見ているものです。

 こうしてお客さまに評価されるのは、すべて従業員のおかげ。その頑張りに少しでも報いたいと、年3回賞与を支給したり、毎年国内外に社員旅行に出かけたりしています。

――しずおか焼津信用金庫さんとは創業以来の付き合いだそうですね。

20歳で創業し、無借金の優良企業に成長 解体技術を考案し、特許も取得安全を追求した解体作業
●株式会社佐野総業 事業内容/解体工事業、産業廃棄物処理業、従業員数/43人、売上高/10億8300万円(2020年度)、所在地/静岡県富士市今宮488-24、電話/0545-23-0210、URL/sanoso.com

佐野 おかげさまで今では総代の一人に選んでいただけるようになりました。営業の方がお客さまを紹介してくださるなど、大変よくしていただいています。近い将来、自社中間処理場を増やす予定なので、そのときには融資をお願いできればと思っています。

――今後の抱負をお聞かせください。

佐野 東京都や愛知県などでの事業拡大も考えていますが、「身の丈にあった堅実経営で会社を末永く存続・発展させて、地域社会に貢献し続けます!」が弊社の社是。拠点である静岡東部を盛り上げていけるよう、今後もコツコツやっていきたいと考えています。

(取材・文/杉山直隆、「しんきん経営情報」2022年1月号掲載、協力/しずおか焼津信用金庫