危険度への“翻訳”が進む
一般認識とのズレも課題

 気象災害の危険が迫っていることを知らせる表現も変化している。

「今年3月、気象庁のホームページの地図上で、大雨による災害の発生リスクを5段階表示する『危険度分布』に『キキクル』という愛称が付きました。

 これまで単純に“雨量”で示していたことを“災害の危険度”に翻訳し、身の安全を守る行動につなげるための工夫をこらしたものです。

 土砂災害、洪水、浸水などそれぞれの災害の危険度が一目で分かるし、リアルタイムで誰でも見ることができるので、ちゃんと活用されれば被害を格段に減らすことができると思います」

 避難情報の区分も今年の5月から変更された。これまで「避難勧告」と「避難指示」の2つの情報で避難が呼びかけられていた警戒レベル4は、「避難勧告」が廃止され、「避難指示」に一本化されたのである。

 さらに、警戒レベル5は、「災害発生情報」から「緊急安全確保」に変更され、直ちに安全な場所で命を守る行動を取るよう呼びかけが行われることになった。ただし、警戒レベル5は既に災害が発生・切迫しており命の危険がある状態であるとともに、必ず発令される情報ではないことから、警戒レベル5を待つことなく、警戒レベル4までに避難することが必要だという。

「気象情報は、何か大災害が起きるたびに予算が付き、どんどん新しい情報ができてきた面があります。それは進化ではありますが、多すぎると一般の人にとっては難しいだろうというので整理され、今回のように避難とセットでレベル化して、より分かりやすく、実際の避難行動に生かせるような形にしようという取り組みになりました」

 例えば「特別警報」は、2011年9月に紀伊半島で起きた大規模な土砂災害をきっかけにできたもの。

「いきなり予算が付いて、いつまでに作らなければならないとの期限が設けられたため、結構大変だったみたいです。2015年にできた『噴火速報』は、2014年の御嶽山噴火による大惨事を契機に作られました。

『数十年に一度の大雨』といった表現も、伊豆諸島の大雨で被害が起きたときに、狭い範囲での大雨についてより危険性を伝えるために何かいい表現はないかという議論があって、使われるようになりました」

 気象予報は生命に直結する情報だけに、現場は常に試行錯誤を繰り返しているわけだが、斉田さんとしては不満もあるようだ。

「計画的に、こういう予報を作っていこうというよりは、張りぼて式にどんどん情報が増えて来ているのはどうかなと思いますね。そうした情報自体も、実は一般の皆さんが知らないうちに、意味合いが変わっていたりします。

 例えば『記録的短時間大雨情報』は82年の長崎豪雨の翌年から始まったものですが、現在は、単純に記録的短時間大雨情報の数値が出ただけでは発表されず、危険度分布がレベル4以上になった場合に、災害に直結した情報として発表されるようになっています。そうすると今年などは、北海道だけが断トツに多くて、九州や四国は雨量が多くても当てはまらない。一般の認識とはだいぶズレている感じがします」