財務諸表に載らない
「資産」と「負債」

 私が社長に就任したのは2016年6月。当時で創業40年以上の当社には、人材面において「資産」と「負債」がありました。

 資産といえるのは、当社社員の真面目さです。

 自分が言うのも少し恥ずかしいですが、社員やフランチャイズチェーン店で働いている人たちは、本当に真面目で、うそをつかず、一生懸命に仕事をする人たちばかり。

 当社は創業者の時代から、「うそをつくな」「約束を守れ」「でたらめをするな」「ごまかしをするな」「人を裏切るな」というのをモスのDNAとして徹底しています。

 私が社長になって以降、「正直に話そう」「約束を守ろう」「丁寧に仕事をしよう」、「誠実に仕事をしよう」「信頼に応えよう」と受け入れられやすい形で伝えていますが、いずれにせよ、そのDNAは長年にわたり引き継がれています。

 では負債は何かといえば、仕事の仕方でした。

 社員やチェーン店の人たちは、誠実で一生懸命に仕事をするのですが、仕事の仕方が標準化されておらず、属人的な要素が強くありました。その結果、時には「無駄な努力」に時間を費やすケースも少なからずありました。

 創業以来、当社が大切にしている考え方の一つに「心+科学」というものがあります。

 心とは、思いや熱意などの情緒的なものであり、科学とは客観的、合理的なものです。したがって、「心+科学」は、「熱い心と冷静な頭」の言葉にも通じると思います。

 私が社長として注力すべきことの一つは、「科学」の面をさらに強化することだと考えました。

 そこで、仕事を「見える化」するために、SDP(組織魂プロジェクト)という取り組みを始めました。これにより、業務の質や効率が上がるだけでなく、それぞれの仕事を見える化したことで、長年同じ仕事をしていた人をローテーションさせて、別の仕事にチャレンジさせることも増えました。