知りうる限りの情報を
フランチャイズオーナーと共有

 食中毒事故など、絶対に起こしてはいけないことですので、社内は緊張感が高まりました。店舗を含め、モスのサプライチェーン内では菌が検出されず、原因の特定には至りませんでしたが、モスバーガー店舗をご利用された複数のお客さまに症状が出ていることから、当社に責任があることは間違いありません。とにかく当社で分かっている範囲で、社内や取引先を含め、正直に発表しなければならないと考えました。

 そこで9月には、関東甲信地方の19店舗を利用した計28人に、O121感染者がいたことを明らかにするとともに、生鮮野菜を中心として、生産、検査、物流、店舗に至る全ての過程において、さらなる洗浄・除菌、食材の検査項目の追加などの再発防止策を発表しました。

 食中毒事故を二度と起こさないよう、調達から何から、すべてのレベルを高めました。

 とはいえ、それだけで社内外の不安が収まるはずもありません。

 フランチャイズオーナーに可能な限りの情報を直接伝えようと、私と会長で二手に分かれ、全国20支部を回りました。そして、これまでの経緯、現状で分かっていること、どういう対処をしたのかについて、正直に伝えました。

 不安を払拭するためには、数値で示すことも重要です。

 食中毒事故を発表した18年9月と翌10月の全店売上高は、前年比で約15%減りました。

 しかし、フランチャイズオーナーに対し、「来年3月までにしっかりと前年比100%まで戻します」と断言しました。

 そしてフランチャイズオーナーへの説明会では毎回、業績改善の状況についてグラフを示し、当初予想の業績に対して、どれだけ上下したか、また、その要因は何だったかなどを丁寧に説明しました。

 もちろん、実現のためにはフランチャイズオーナーを含めた関係各社の協力が欠かせません。しかし、うれしいことに、「こういうときだから絶対一致団結しなきゃいけないんだ」と声を上げてくれるオーナーが大勢いました。

 食中毒事故は、当社にとって創業以来の危機でした。

 おいしさとともに、安全安心のブランドであるモスバーガーにおいて、食中毒なんて絶対にあってはならないことです。何よりも顧客とフランチャイズオーナーの人たちに対して本当に申し訳ないと思い、安全を確保するための対応を迅速に進めました。

 さらに3カ月かけて現場の意見を聞いて、オペレーションのもう一段の改善も図りましたし、そこからもう一段安全にしようと、外部の調査会社も入れて、約1年半かけて、商品調達から店舗までの一連の流れを見直す作業なども行いました。

 19年3月期の業績は、11年ぶりの連結最終赤字となりましたが、19年3月には宣言通り、単月の既存店売上高は前年比100%を超える102.3%にまで回復することができました。