メタバースがもたらす
革新的なビジネスチャンス

 各国企業がメタバースを重視するのは、それがより多くのビジネスチャンスにつながるとの期待が高まっているからだ。メタバースは私たちの生き方を劇的に変える力を持ち、経済運営の効率性を高める。

 その一つとして、アバターの重要性を認識しておこう。アバターの外見は、私たちの行動に無視できない影響を与える(プロテウス効果)。スタンフォード大学のジェレミー・ベイレンソン氏らの実験結果では、長身で威厳を持った行動様式をとるアバターを提供された被験者は、低身長のアバターを使う被験者よりも強気に交渉を進めることが報告された(参照1)。

 また、コロナ禍で世界各国に急速に普及したZoomなどのオンライン会議システムに関して、自分の顔の見た目に満足を持てないことが原因で、利用者がストレスを感じていることも報告されている(参照2)。

 つまり、より魅力的なアバターを作ることによって、デジタル空間における人々の新しい行動様式が引き出される。そのためには、高精度の画像処理センサーを用いて森羅万象に関するありとあらゆるデータを集め、それを用いてレンダリングを行う(データを用いた画像や音声などの生成)など、新しいデジタル技術が必要だ。

 そのうえでメタバース利用者がより魅力的なアバターを手に入れることができれば、より積極的な自己開示(セルフディスクロージャー)が促進される。それによって、初対面の人(アバター)とより短い時間で集中した議論を行う可能性は高まり、個人や企業の成長は加速すると期待される。

 そうした期待を背景に、鮮烈なデジタル体験の提供を目指してメタバース関連分野にヒト・モノ・カネをダイナミックに再配分し、新しい発想の実現に取り組む企業が増えている。それは、既存分野から先端分野への生産要素の再配分を加速させ、経済運営の効率性向上を支える。