身体論を中心にした独自の教育メソッドで知られる、明治大学文学部教授の齋藤孝氏。教育学者として大学やセミナーなどで人材の育成にも取り組んでいる。これから就活を始める若者たちは、どのような心構えを持って社会に出ていけばよいのか。「ネクストwithコロナの生き方・働き方」について、人生の先輩としてのアドバイスをもらった。(取材・文/ライター 上條昌史、撮影/宇佐見利明)
*本稿は、現在発売中の紙媒体(雑誌)「息子・娘を入れたい会社2022」の「Special Interview ネクストwithコロナの生き方・働き方」を転載したものです。
「世の中に出ていくことは、自分で勝負をするということ。いつまでも、誰かが何とかしてくれるだろう、という傍観者的な意識だとうまくいきません」
齋藤孝氏は、これから社会に出る若者たちに向けてそうアドバイスする。もはや、年功序列や終身雇用で守られている時代ではない。まずは自分に与えられた役割を理解し、当事者意識を持って動くことが大切なのだ。
「例えば現代のサッカーでは、自分はフォワードだから守備をしない、という選手は戦術的に使われません。全員が攻撃もすれば守備もする、というチームの戦術を理解して動かなければ、ゲームに出させてもらえない。現実の世界でも大切なのは、会社の戦術を理解し、自分に求められる役割をこなしながら、プラスαで返していく意識です。例えばライバル会社10社について調べてくれと言われたら、20社を調べてレポートを提出する。“この人は積極的に走ることのできる選手なんだ”と思ってもらうことが大切なのです」
求められているものを察知し、そこに向けて努力できるのが、その人の「仕事力」。
「どの業界でも、仕事というのは、だいたい似ているものです。前の職場でちゃんと仕事ができなかったけれど、転職したら成功した、という例はまずありません。どんな仕事でも、できる人はできる。そのことを意識してベーシックな“仕事力”をつけてほしいと思います」