「日本の英語教育を良くする手っ取り早い方法として岩波新書が『伝わる英語表現法』を復刊する があることはあまり知られていません。」「『英語独習法』が売れている岩波新書さんにはこの機会に『伝わる英語表現法』を復刊していただきたい(土下座)。」などのツイートが岩波書店のスタッフの目に留まった。

「まさか、岩波新書のスタッフの方にツイートを拾われて、復刊につながるとは想像もしていませんでした。復刊希望というよりは、こんなに素晴らしい本があるので多くの人に知ってもらいたいという願いで発信していました。『伝わる英語表現法』は新書でありながら受験の英作文対策に最適な教材でもあり、それ以外にも英語学習法や指導法のヒントがたくさん読み取れます」

『伝わる英語表現法』の刊行は2001年だが、昨今の英語学習新書ブームで再注目され、復刊に至った一冊だ。このような英語学習新書のヒット現象を田中氏は次のように捉える。

「『英語独習法』『英語の読み方 ニュース、SNSから小説まで』『伝わる英語表現法』『シンプルな英語』(講談社現代新書)に加えて、最近では井上逸兵著『英語の思考法』(ちくま新書)が話題です。これら新書に共通しているのは“硬派”“本格的”といったところでしょうか。また、どの本も、ここ四半世紀で流行していた『3日間で完成!』『空前絶後にわかりやすい!』のような軽薄な売り文句の英語学習本、問題集とは対極にあることです。そうしたものがそれほど役に立たないと感じ、腰を据えて学び直そうとする人が増えたのだと思います」

 例えば、『英語独習法』では「スキーマ」と呼ばれる認知科学の概念に重点を置き、表層的ではない英語学習法を提示する。

 スキーマとは「知識のシステム」とも言われ、子どもや外国人が話す日本語に違和感を抱くのは、スキーマによるもの。この違和感は言語化しにくく、ほとんどの人は無意識にスキーマにアクセスしているのだ。日本語と同様に英語話者にもスキーマがあり、aとtheの運用などを無意識に行っている。

 同書のなかでは、英語スキーマの獲得を含めた英語力向上は、それなりの時間を要することが明確に述べられている。