新書のメリットを
生かした学習法とは

 今回の新書ブームを機に英語を学び直してみようという人に対し、田中氏は次のようにアドバイスする。

「新書の良いところの一つは持ち運びやすさですから、常に携帯して、移動時間や空き時間に気軽に開くことができるようにしておくことです。何度も読み返すことで理解が深まり、記憶も強まります。気になったときに軽い気持ちで開いてみる。そして、もっと知りたいことは自宅の机に向かって厚めの本や辞書を参照する。この流れがおすすめです」

 現在のブームを見て、各出版社は続々と類書を刊行している。田中氏もこのブームに期待を寄せている。

「良い本が出ると、それを読んだ別の書き手や出版社が、さらに良いものを生み出そうと努力します。今回のブームでもそうした理想的なサイクルが生まれてくることを期待しています。英語学習新書は1000円前後でかなり長時間楽しむことができますから、コスパのいい趣味・娯楽にもなり得るでしょう」

 ビジネスでの活用などを目的に英語学習に取り組む人も多いだろう。こうした実利を求めることもモチベーションにつながる。だが田中氏は、学習すること自体に価値を見いだすことが人生の幸福度を向上させると話す。

「私は『試験に追われない勉強ほど楽しいものはない』という考えです。何かを理解できたり、新しい知識を得たり、こういった体験自体が生きる喜びの一つであると思います。英語の新書に限らず、他のジャンルの新書や書籍がどんどん売れてほしいです。ブームになることで、さらによいものが生まれる土壌が育まれます」

 自粛続きで息の詰まるコロナ禍において、英語学習新書は読者に生きる喜びを与えているのかもしれない。