適材適所と新任理事の意識向上が
理事会運営のコツ

 理事会を上手に運営していくコツはいろいろあるが、まずは「適材適所に人材を配置する」ことが大切だ。当然ながら、人には個性があり、さまざまな特性を持っている。例えば、リーダーシップのある人、コミュニケーション能力の高い人、鋭い一言を言う人、広報的なことが好きな人、IT関係に強い人、マンション内部の事情通の人、ママ友付き合いの上手な人、子どもが好きな人、高齢者への配慮や支援ができる人など、マンションにはいろいろな人がいるはずだ。

 そこで、それぞれの得意な分野や適性を考慮して、理事の役職や役割を決めるといいだろう。新任理事が集まって、理事会で役職を決める際には、くじ引きやジャンケンなどではなく、みんなで自己紹介がてら、いろいろなことを話し合って、役職や役割を決めていくことをお勧めする。

 仮に、2年任期で半数改選の理事会だとするなら、前半の1年目は、先輩の理事が新任理事の個性や特性を見て、後半の2年目で、その人にふさわしい役職や役割を決めるようにすると、本人も周りの人も納得がいきやすいだろう。

 そうはいっても、理事を経験したことがない人で、最初から管理組合の活動への意識が高いという人にはなかなかお目にかかったことはない。だから、初めて理事を経験する人には、管理組合の活動に興味を持てるようなきっかけを作ってあげることが大切だ。

 そこで、次のような手順で、新任理事への声かけを行ってみてはいかがだろうか。

〈理事就任の手順〉
1 次期輪番の理事への通知
  ↓
2 現理事が新理事候補者を訪問
  ↓
3 オリエンテーション
  ↓
4 総会にて新理事および監事の承認
  ↓
5 役職決定(理事、監事)
※できれば理事長や他の役職者もここで決定
  ↓
6 担当者ごとに引き継ぎ 
※できれば新旧の理事間でコミュニケーションを取る

 1・4・5はたいていのマンションで行われていることだが、できればぜひ2と3も積極的に取り入れてみていただきたい。1で突然通知が届き、その後いきなり4で理事に就任ということでは、新理事としては不安だらけになる。

 そこで新理事就任前に、現理事が数人で新理事候補者を訪ね、3のオリエンテーションも兼ねて、組織や役職の業務内容、現在の活動内容などを説明しながら、いろいろな話をすることでお互いに理解が深まり、管理組合や理事会の活動にも興味を持ってもらうきっかけになるのだ。要するに、早いタイミングで次期の理事の意識向上を図るのである。

 新理事候補者としても、通知の紙1枚だけが届くよりも、現理事の訪問を受けて話をすることで、良い意味での「同調圧力」が働き、次期の理事を引き受けてみようという気持ちになりやすいだろう。

 仕事や家庭のことと理事の役目との両立は、大変な面もあるだろうが、理事に就任してみて初めて分かることも多いものである。理事の順番が回ってきた際には、ぜひ積極的に理事の仕事に取り組んでみてほしい。

「マンションは自分の人生で一番の高額の買い物だ」という人が多いと思うが、人生最大の購入資産が目減りしないように、しっかりと組合員としての「権利」を行使し、より良いマンション環境の実現と資産価値の向上を目指していただきたいと思う。