中国はインドと手を組もうとした

 世界がコロナ禍に見舞われる前の2019年11月4日、インドのモディ首相は、地域的な包括的連携(RCEP)協定への不参加を表明したが、その数週間前の10月11日と12日に、インド南部のチェンナイで習近平国家主席と非公式の会談を行っていた。この場で習氏は、モディ氏にこう呼びかけた。

「将来の数年間は中国が民族復興を実現し、中印関係を発展させるための重要な時期となる。我々は戦略的かつ長期的な観点から中印関係の百年の計を立ち上げ、手を携えて中印両国の二大文明を復興させなければならない」

 中国もインドも数千年の歴史を持つ東洋の文明国家だが、中国は欧米列強によって半植民地化され、インドは英国によって長年にわたる植民地支配下に置かれてきた。その歴史も痛みも共有できるというのが習氏の考えだった。

 しかし、すでにインドは中国封じ込めを狙う「日米豪印4カ国戦略対話(クアッド)」などに組み込まれており、時すでに遅しであった。