高まる警戒感、
重症化率が低いという楽観は禁物

 オミクロン株の致死率が仮に0.1%であれば、それは季節性インフルエンザと同様であり、新型コロナの収束といえる、という米国専門家の楽観的な予測もあります。しかし、悪いシナリオに備えるのが医療であり危機管理です。

 いかに致死率や重症化率が低くても、オミクロン株は広がりやすいですから、感染者数自体が増えれば、重症者数も増えるということになります。これが最近の2カ月以上、感染者数が落ち着いていても油断できない、重い危機感がのしかかる理由です。

 感染対策の現場の緊張感は今までとは異なる次元ともいえます。せっかく第6波への備えをしても、その備えをはるかに凌駕(りょうが)する可能性が迫っています。まさにこの数カ月の感染者急減でも全く安心できないのは、有限の医療資源と保健所、品川区、東京都、国とが連携しても、想定以上の人数が感染すると、医療ひっ迫となってしまうからです。

 これは医療現場の人手不足というよりは、ベッド数、医療器材、医師、看護師など感染対策チームのキャパシティの問題といえます。デルタ株を参考にしすぎてはいけないのはこのためです。

 空港でのオミクロン株水際対策は一定の成果を収め、これからも対策は続きますが、一方で市中感染も出始めました。完璧な水際対策をしても、無症状の濃厚接触者がもれてしまうのはやむを得ません。今は国内対策というステージに入ってきました。

 重症化率がデルタ株の4分の1であっても、4倍以上の人数が感染すればデルタ株と同様の医療ひっ迫が待っています。デルタ株のときよりもワクチン接種率は高まり、治療薬も整い始めましたので、選択肢が増えているのは好材料ではあります。