結婚生活はほぼ子育て、不器用な新庄を導いた

 離婚後14年を経た元妻の大河内志保は「私は基本的に、恋人の時も、結婚していた時も、新庄さんに対して『自分のもの』という感覚が一切なかったんです。国の宝、国民的スポーツ選手のアシスタントをさせてもらっているだけという感覚しかなかった。別れてもそれは変わらずに、せっかく私も携った彼の夢がかなうといいなって」と、心の底からそう思って話してくれたのが印象的だった。

 けなげとか自己犠牲とか献身とか、そういう受け身で古典的な妻とは少し違うようだった。こう言っちゃなんだが、さすがあの宇宙人とも呼ばれた鬼才・新庄剛志が20歳でほれ込み、口説き落とした人だと思わされるほどに、ある意味「同じくらい変人」でもある。

 JALのキャンペーンガールやクラリオンガールを務め、芸能界での活躍が期待された大河内だったが、第一印象が「田舎のジャニーズ」だった新庄からの猛プッシュで交際開始。阪神のスター選手だった新庄のプライベートはすぐに人々の知るところとなり、交際中からマスコミに追いかけられた。「野球に集中できない」と困りきった新庄を見て「彼の死角は全て私が埋める!と、プロのパートナーとして彼と一緒に本気で夢を追うことにしたんです。野球をする新庄剛志と二人で一人、私が『野球以外のことをする新庄剛志』になろう、って」と22歳で芸能界を引退。しかも同い年の二人は結婚を考えるにはまだ若く、「一人前になったら結婚しよう」と、打率2割8分をその具体的な目標に定め、本当に結婚するまでにその後7年かかった。

 二人で一人の新庄剛志、料理などの野球以外の面を全て担当する側となった大河内は、真面目さゆえ、女子栄養大学の料理教室と調理師科でみっちりと栄養や衛生管理などを学び、調理師免許まで取得した。新庄の食を準備する立場としての彼女のこだわりは、著書にかなり詳細につづられている。