なぜ習近平政権は
ゼロ・コロナを徹底するのか

 リーマン・ショック後から2011年前半までの中国経済を振り返ると、共産党政権は不動産投資を増やすことで人為的に経済成長率をかさ上げし、四半期ごとの実質GDP成長率は、前年同期比で10%程度を維持した。

 その後、経済対策の効果が一巡したことで経済成長率は徐々に低下したが、共産党政権は雇用を維持するために同8%程度の成長を目指し、不動産投資に加えて道路や高速鉄道の建設などのインフラ投資を重視した。

 その結果、過剰投資に拍車がかかって、資本の効率性が低下した。加えてコロナ禍の発生が、中国の経済成長率をさらに低下させ、「22年の実質GDP成長率は、前年比5%程度に低下する」と予想する中国経済の専門家は多い。

 経済成長率が低下する状況で感染再拡大が長引けば、人々の恐怖心理が高まって中国国内の消費や投資は減少し、雇用・所得環境は軟化するだろう。と同時に、共産党政権への不平や不満も増えるだろう。また、共産党政権は、2月の北京冬季五輪や秋の党大会という重要イベントを控えている。感染者が増加して五輪への不安が増えると、3期続投、さらには毛沢東に次ぐ中国の最高指導者としての立場を確立したい習近平国家主席の求心力を低下させるだろう。

 そうした展開を避けるために、共産党政権はゼロ・コロナ対策を徹底せざるを得ない状況に直面しているとみられる。陝西省西安市ではロックダウンが実施された。その結果、経済活動が停滞し、食料不足が発生。さらには、そうした状況から逃げようとする人が摘発されるなど、共産党政権のゼロ・コロナ対策は非常に厳格だ。GDP規模で世界第2位の中国で、人流・物流の寸断が起きることは、世界経済に大きなマイナス影響を与える。