ロックダウンした西安市には
メモリ半導体大手の工場がある

 その一つが、メモリ半導体の需給の逼迫(ひっぱく)だ。西安市にはメモリ半導体大手の、韓国サムスン電子と米マイクロンの工場がある。注目すべきは、ロックダウンに対するサムスン電子の運営方針の変化だ。

 当初、サムスン電子はNAND型フラッシュメモリの生産を続ける意向を示した。しかし、21年12月29日に一転、生産調整を発表した。22年1月5日時点では、稼働の中断はなく、大きな支障はないという。とはいえその実態は、可能な限り生産を継続したかったものの、ゼロ・コロナ対策によって従業員の通勤や資材調達が難しくなり、生産調整を余儀なくされたということだろう。

 当初、サムスン電子が生産を続けるとした理由の一つは、世界のメモリ半導体市況が落ち着く兆しが見えたからだと考えられる。21年後半からメモリ半導体の供給過剰を背景に、NAND型フラッシュメモリとDRAMの価格は調整局面にあった。その後、11月半ばを過ぎてDRAM価格は底打ちした。

 そうした状況から、米マイクロンは21年12月~22年2月の業績に強気な見通しを示した。マイクロンは、家電や自動車向けのメモリ半導体需要を取り込んでいる。最先端メモリチップを中心に、需給はタイト化しつつあるようだ。

 サムスン電子にとって、市況の反転局面での生産調整は、収益獲得の機会を手放すことを意味する。それがロックダウン直後に同社が生産継続を重視した理由の一つと考えられる。

 ロックダウンの長期化に備えて、在庫を積み増す考えもあっただろう。サムスン電子の西安工場は、世界のNAND型フラッシュメモリ生産の13%程度を占め、収益に与える影響は大きい。

 台湾のトレンドフォース社によると、21年9月末時点でサムスン電子は世界のNAND型フラッシュメモリ市場で34.5%のシェアを持つ。また、韓国メディアによると西安第1、第2工場の生産規模は、サムスン電子のNAND型フラッシュメモリ生産全体の40%程度を占める。

 西安市の人の移動や物流の停滞が長引けば、サムスン電子とマイクロンは生産調整の長期化を余儀なくされ、メモリ半導体の需給はより引き締まる可能性がある。