問題は、汎用型から最先端まで
追加の増産余地が極めて少ないこと

 メモリ半導体の需給逼迫化懸念に加えて、コロナ感染再拡大のリスクと共産党政権によるゼロ・コロナ徹底は、世界的なロジック半導体の不足に拍車をかけるだろう。なぜなら、中国では中芯国際集成電路製造(SMIC)などの中国企業や、台湾、韓国、米国、欧州などの半導体メーカーが汎用型のメモリとロジック半導体の生産を増やしてきたからだ。

 具体的には、四川省成都市では米インテルやテキサス・インスツルメンツが、江蘇省無錫市ではSKハイニックスや車載半導体大手の独インフィニオンが、上海市では台湾積体電路製造(TSMC)が車載用などの半導体工場を運営している。

 TSMCは江蘇省・南京工場の車載半導体生産ラインを拡張する。米ICインサイツによると、22年に中国が台湾に次いで世界2位の半導体生産大国に成長すると予想している。

 ゼロ・コロナ対策を徹底しているにもかかわらず、中国では新規感染者が発生している。短期間で感染再拡大が収束する展開は想定しづらい。また、党大会の終了まで共産党政権がゼロ・コロナ対策を強化する可能性も高い。それにより、中国内外での半導体生産や、サプライチェーンがさらに混乱する展開が考えられる。そうしたリスクに対応するために、半導体の調達先を中国以外の国・地域に切り替えようとする世界の大手自動車、IT、家電メーカーが増えるだろう。

 問題は、汎用型から最先端まで、世界の半導体生産ラインがすでにフル稼働しており、追加の増産余地が極めて少ないことだ。22年を通して、ロジックを中心に世界の半導体不足が深刻化し、各国の生産活動が想定を下回る可能性は否定できない。

 特に、裾野の広い自動車産業の生産停滞は、主要国の景気回復には打撃だ。状況によっては、米国政府が21年以上の「強い姿勢」で、台湾や韓国の半導体メーカーに、自国企業への半導体納入を優先するよう求める展開も想定される。

 中国のゼロ・コロナ徹底による世界的な半導体不足の深刻化リスクは、自動車一本足打法のわが国経済にとって無視できないマイナス要因だ。