感動小説『精神科医Tomyが教える 心の荷物の手放し方』の著者が、voicy「精神科医Tomy きょうのひとこと」から、とっておきのアドバイス。心がスッと軽くなる“言葉の精神安定剤”で気分はスッキリ、今日がラクになる!

精神科医がアドバイス!頑張らなくてもいいじゃないイラスト:カツヤマケイコ

歯を食いしばって頑張る?

きょうのひとことは、
「歯を食いしばらない」

よく「歯を食いしばって頑張る」とか「自分を追い込んで頑張る」みたいなことが美化されることがあります。

頑張ることが悪いわけではないのですが、やらなくてはいけない状態に追い込まれたり、他人に押し着せるような精神論をかざしたりするときに使われることが多いように思います。

人生では、放っておいてもどうしようもなく大変な時期が勝手にやってくることがあるものです。

そういうときに自然と歯を食いしばって頑張りますから、ことさらに自分を茨の道に追い込まなくてもいいと思うのです。

スポーツ界もいまはだいぶ変わってきましたが、かつては精神論がはびこって、夏場の暑い時期でも水分も摂らずに、それこそ歯を食いしばって頑張ることを強いられた時代もありました。

そういうことを強いられた人は、ちょっと悔しくて、でも悔しいからこそ自分では認められず、後輩なんかに歯を食いしばって頑張ることを強いたりして、悪循環を生んでいた面もあります。

辛い思いをしながらガムシャラに頑張れば、その先に見えてくる境地があるんじゃないかと、漠然と思い描いていたという面もあるように思います。

経営の世界では、これまで費やしたお金を惜しんで、事業の中止や撤退の決断ができない状態を「サンクコスト」(回収できない埋没費用)と呼びます。

これまでやってきたから、それをナシにしてしまうともったいない気がして、合理的な判断ができなくなってしまうことがあるのです。

これまでやってきたことに疑問を抱きつつも、歯を食いしばって頑張ることで、自分の気持ちを半ば無理やり調整しようとする面も否めないのではないでしょうか。

わざわざ大変な思いをするために、自分を追い込まなくてもいいのです。

頑張らなくていいという意味ではありませんが、歯を食いしばって苦しい思いをする道を選ばなくてもいいということです。

人がなにかを上達したり成長したりするときは、ある課題があって、それを乗り越える達成感や成功体験を得られて、進歩している高揚感が得られます。

きちんと睡眠と食事をとって、健康的でいながら、ちょっとずつ前進する。このバランスがとれているからこそ、人は成長しやすいのです。

睡眠不足の状態や疲労困憊の状態に自分を追い込んだりして、そんな状況の下にわざわざ自分を追い込んで歯を食いしばって頑張る必要なんてありません。

厳しい道に自分を追い込もうとすることを否定するわけではありませんが、歯を食いしばって頑張らなくてはいけないことを自ら増やさなくても、もっと健康的に前進できるのではないでしょうか。

一時的には頑張れたとしても、やり過ぎたら疲弊しますから持続可能性が低下しますし、歯を食いしばり過ぎたら歯が削れてしまいます。

どうか、頑張りすぎないでくださいね。

きょうのひとことは、
「歯を食いしばらない」
でした。

参考になったかしら?