運動不足解消のために、自宅でできるトレーニングやエクササイズの人気が高まった。しかし前述のように、筋トレをしていても座位中心の生活を送っていれば筋肉はどんどん低下していく。座位中心の生活が、筋力低下の根本的な問題だと考えられるだろう。

便利ツールへの慣れが
運動不足を加速させる

 家にいると体を動かさなくても生活がほとんど成り立つことも、要因となっているかもしれない。お掃除ロボットの登場により、家中を歩き回って埃を取る必要はなくなった。洗濯乾燥機があれば、洗濯物をベランダまで運んで干すという動作も不要だ。

 日常を便利にするツールの使用が、運動の機会減少を招いていることは否定できない。書籍『やせる!楽しい!若返る!やきとりじいさん体操』(岡田麻紀著、ダイヤモンド社)では、日常生活であまり使われない体を動かす体操を提唱しており、便利な生活への慣れがもたらすデメリットを指摘している。

「今は、『意識せず、快適に生活していること』が、運動不足を引き起こしています。人のカラダは、様々な機能を持っていますが、その諸機能は、使いこなすことで正常な働きを維持します」(『やきとりじいさん体操』より)

 たとえば洗濯物は天日干しにしてみたり、部屋をロボット型掃除機ではなく自分で掃除してみたりすることだ。こうした家事は腕をよく伸び縮みさせ、脚も使う。体を使って日常を過ごすことを意識するだけで、運動の機会を増やすことは可能だろう。

マスク着用による
無自覚のデメリットとは

 もう1つ、ビジネスパーソンが注意すべき筋力低下がある。それは表情筋の低下だ。感染対策の基本はマスクの着用であり、多くの国や都市で推奨されている。しかし、マスク着用が表情を乏しくさせるデメリットが問題視されるようになってきた。

 マスクを着用するようになってから、笑顔をつくる機会が減ったビジネスパーソンもいるだろう。従来であれば、会議や商談では顔を合わせてディスカッションすることが一般的だ。初対面の自己紹介や挨拶、意思表示のシーンでは、表情が印象を左右することが少なくない。